企画を考えるとき「面白いかどうか」を判断するのはとても難しいですよね。そんな「面白い」の定義を考え続けている井村光明さんの書籍「 面白いってなんすか!?問題 」を紹介していきます。
この記事でわかること
- 書籍《 面白いってなんすか!?問題 》の魅力
- どんな方にオススメの書籍か
- 「面白い」に近づく3要件
もくじ
「 面白いってなんすか!?問題 」ってどんな本?
書籍「 面白いってなんすか!?問題 」は、一言で表すと、「アラフィフ崖っぷちコピーライターの苦難とその結果得られた ”面白い” コピーの考え方をまとめた本」です。崖っぷち、と言っても、著者の井村さんが考案した「さけるグミ」のCMは、テレビをあまり見ない筆者でも印象に残っている作品です。
上のCMの前シリーズも、井村さんが担当し、不倫・横領・キャバクラをテーマにしたCMを放送。子供向けのCMとは思えないテーマで、日本のみならず外国の方からの支持も高いCMに仕上がったのです。
しかし、井村さんが不倫・横領・キャバクラという攻めたテーマをあえて選んだのは、企画の提案が「自主プレ」だったため。自主プレとは、顧客が依頼をしていないのに、広告代理店が自主的に商品CMを企画し、提案するプレゼンのことです。
そのため、採用率は低く、顧客側が「広告を打つ気はなかったけど、やってみたい企画だ!!」とならなければ、ボツになります。採用率の高い仕事が若手に振られる一方で、自主プレを頼まれてしまった井村さんだからこそ、たどり着いたテーマだったようです。
本書は、若手の成長に焦りを感じ、広告学校の教師時には生徒に「面白いってなんすか!?」とキレられながらも、「面白いとは何か」について考える井村さんの思考や感情を、包み隠さず紹介してくれる本です。
そのため、本文は切羽詰まっていて、ナイーブな様子も多々見られます。読書側が「井村さん、頑張って!」と応援したくなるような内容です。同じ広告業界で同じ思いをしている方ならば、「焦っているのは自分だけじゃないんだ」と勇気をもてる作品になっています。
- 「面白いもの」を考えるクリエイターの方
- コピーライターに興味がある方
- 文章を書く仕事をされている方
本書の1番見所は「面白いとは何か」を伝えてくれているところ。ですから、日々「面白いもの」「人にウケるもの」を考えているクリエイターの方にオススメ。著者の井村さんは、若手の成長に焦りを感じながら、もがいている様子をしっかり文字にしているので、「面白い」に悩まさせているクリエイティブ系の職種の方には特に読んでほしい書籍です。
また、コピーライターに魅力を感じている人は、広告学校の様子を教師の目線から知ることができますし、コピーライターという仕事の、難しさや面白さを追体験できるでしょう。
文章を書く仕事をされている方には、言葉との向き合い方のきっかけになると思いますので、オススメです。コピーライターは、長文というよりは短文を作る方ですが、文字と向き合うのが仕事。文章の題名や見出しを考える時に使える知識が、詰まっています。
「面白い」に近づく3要件
本書の要点である「『面白い』に近づく3要件」について紹介していきます。
「面白い」の対義語であれば、「面白くない」や「つまらない」を連想しますよね。もう少し「つまらない」について掘り下げてみるましょう。
「なぜ、つまらないのか?」
それは、「意味が分からない」「何が言いたいのか、分からない」ために、つまらなく感じるのです。井村さんがこれに気がついたのは、自分の企画を中学生にレビューしてもらった時のことでした。
飲料のキャラクターを考案する企画で、そのコンセプトを中学生にプレゼンするのですが、ウケが悪かった時は必ず「よく分かりませんでした」という感想になったんだとか。企画側は、意図を完全に理解しているので「なんで、分からないんだ!!」とイライラするのですが、伝わらなければ意味がない。
つまり、面白いとは「分かり易いこと」が大切なんです。
本書で出てくる、このキャッチコピーを読んでみましょう。
「試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。」
面白いって何なんすか!?問題 センスは「考え方」より「選び方」で身につく
このキャッチコピーを読んで、どんなことを思い浮かべたでしょう?「これを着たら、あの人に褒めてもらえるかな?」と不安や期待を抱えながら、お店で服を試着している様子が思い浮かぶのではないでしょうか。
多くの人がもっている経験から、情景を想起させられれば、心の深い部分で「確かに〜〜!!」と思わせるような、分かり易い文章になります。上のキャッチコピーであれば「試着室」という言葉が、共感を呼び起こすキーワードになっています。
たくさんの商品の中で「これは面白い!」というものには、共通点があります。それは「似ていないこと」。斬新な発想だったり、巧妙な手口だったり、他と似ていないものは「面白い!」と感じやすい。
例えば、マーカーペンを考えてみます。多くの商品が、見た目のデザインやインク速乾性、色数の豊富さをアピールする中で「消せるマーカーペン」というのは斬新な発想ですよね。この、痒いところに手が届いた発想で「フリクション=消せるマーカーペン」として差別化でき、メジャーな商品になったわけです。
著者の井村さんが、TCC賞という広告賞の審査員をした際、賞を受賞するのはやっぱり「似ていないもの」だったのです。同じジャンルの商品 CM(例えば、全種類のビール CM)を連続で見ていると、テレビで見たときは気付かなかったけど、意外とどれも似ている。じゃあ、どれに投票しよう?となった時に、一番「似ていないもの」に、投票が集まるのです。
「面白いとは『似てないこと』なので、斬新な発想をしましょう!」
と言われても、クリエイターの誰しもが「斬新な発想が、ポンポン浮かぶなら苦労しないよ!」と思っているでしょう。「誰でもできる ”面白い” の方程式!」というのはありませんが、近道はあります。
それは、似ていないものを「選ぶ」という意識です。
「選ぶ」の大切さがわかるエピソードを紹介します。
著者の井村さんが広告学校の教師時に、生徒さんらが卒業制作そしている時のことでした。締切まで近いというのに、キャッチコピーが決まらずに切羽詰まっていた生徒さんがいたそうです。
その生徒さんの考えてきたキャッチコピーたちを見て、井村さんは「他人と似ているものが多い」と感じたそう。しかし、そのキャッチコピーの中で「ダンボール」という単語が、井村さんの目を引いたのです。
たくさんの生徒の中で「ダンボール」という言葉をキャッチコピーに入れていたのは、彼1人。「ダンボール」という単語で発想を広げれば、良いものができるのではないか、とアドバイスしたのです。結果、思いがけずプレゼンで優勝!井村さんも、生徒さんも驚きの結果となったのでした。
つまり、たくさんのアイデアの中から、自分しか思いつかなかった「単語」や「切り口」を見極めて選び出すことが、とても大事ということなんです。
なので、「面白く」するためには、まずアイデアを書き出して散らして、その中から吟味して「選ぶこと」を意識してみましょう!
まとめ
- 面白いものは「分かり易い」
- 面白いものは「他と似ていない」
- アイデアの中から、似ていないもの「選ぶ力」が重要
今回は、井村光明さんの書籍「面白いって何なんすか!?問題 センスは「考え方」より「選び方」で身につく」を参考に、”面白い” の3要件について紹介していきました。
面白いの3要件を見て「当たり前じゃない?」と、感じることも多かったのではないかと思います。しかし、この3要件を意識して、自分の企画や文章を見直すことで、「面白くない部分」を削ぎ落とすことができます。
ぜひ「これは面白いのか?」と確認する時に、今回紹介した内容を活用してみてくださいね!
本書では、井村さんの魂の叫びと共に、より具体的な情景が描かれているので、気になった方はぜひ一読してみてくださいね。